営業所技術者の専任工事現場の兼任要件とは

建設業法改正 令和6年12月13日施行

 建設業の許可においては、営業所ごとに専任の「営業所技術者」を1名以上配置することが、建設業法第7条第2号により義務付けられています。営業所技術者は、請負契約締結時の技術的なサポートや、他の工事現場における技術指導などを担当し、原則として営業所に常勤する必要があります。

 近年の技術者不足や生産性向上の観点から、国土交通省は令和6年12月13日より「専任特例1号」(専任特例1号の記事へ)を新設し、主任技術者または監理技術者が要件を満たせば専任を要する現場の兼務を可能としました。

 営業所技術者においても、専任を要する工事現場の主任技術者等を兼任できる制度を導入しました(建設業法第26条の5)。

 この制度により、以下の①〜⑨のすべての要件を満たす必要があります

参照元(国土交通省):https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001854111.pdf

『営業所技術者』の専任工事現場の兼任の要件9つ

 営業所技術者等が、専任を要する工事現場の主任技術者等を兼任するためには、該当する請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係があることが必要です。

 以下に示す①〜⑨の要件は、「専任特例1号」と共通する部分もありますが、異なる点も含まれています。それぞれの要件について、以下で詳しく解説します。

①工事契約

 兼任する建設工事は営業所技術者等が置かれている営業所において請負契約が締結された工事であること

②建設工事の請負代金が1億円未満(建築一式工事の場合は2億円未満)

 請負金額が1億円未満(建築一式工事の場合は2億円未満)の現場であること。ただし、工事の途中で請負代金が1億円以上となった場合には、それ以降は兼任はできず他の主任技術者または監理技術者を専任で配置しなけれなりません。

③兼任現場数は1工事現場まで

 専任特例1は、現場数2までとなっていますが、営業所技術者等が兼任できる工事現場の数は1であることとされています。

④営業所と該当工事現場までの距離は2時間

 営業所技術者等が兼任できる工事は、営業所から当該工事現場までの距離が一日の勤務時間内にで巡回可能なもにであり、車など通常の交通手段で確実に移動できる手段で、移動時間がおおむね片道2時間以内です。

⑤下請け次数は3次まで

 発注者から直接依頼を受けた元請から仕事を受注する業者を一次請けといい、この一次下請業者からさらに下請に発注された業者を二次請けといいます。

 当該建設業者が注文者となった下請契約から数えて、下請次数が3を超えていないことが定められています。

⑥連絡員の配置が必要

 兼任している営業所技術者等との連絡やその他の必要な措置を講ずるため、現場に「連絡員」を配置をすることが必要です。

 例えば工程会議や品質検査等が2つの工事現場で同時期に行われる場合に、監理技術者等となっている営業所技術者が遠隔から指示等をして工事現場側にて適切に伝達することや、施工管理の補助を円滑に行うこと、また事故等の対応も想定して、この「連絡員」を配置することとしています。

<連絡員の要件>
・営業所技術者(主任技術者)と同等の実務経験
・当該建設工事の専任や常駐は求めない
・雇用形態は、直接的・恒常的雇用関係は必要ない(ただし、当該請負会社が配置するものであり、施工管理の最終的な責任は請負会社が負うこと)
・土木一式工事又は建築一式工事である場合は、当該工事に関する実務の経験を一年以上有する者に限る

⑦施工体制を確認する情報通信技術の措置

 工事現場の施工体制について、営業所技術者が情報通信技術を利用して確認できるよう、必要な措置を講じることが求められます。具体的には、CCUSやCCUSとAPI連携したシステムなどを利用し、現場作業員の入退場状況を遠隔で確認できる仕組みを設置する必要があります。

⑧人員の配置を示す計画書の作成と保存等

 建設工事を請け負った建設業者は、以下の事項を記載した人員の配置を示す計画書を作成し当該工事現場に備え置き、及び帳簿の保存期間と同じ期間営業所で保存していることが定められています。

<人員の配置を示す計画書に盛り込むべき内容>
 ●営業所技術者等が所属する営業所の名称も記載
 ●当該建設工事に係る契約を締結した営業所の名称も記載

⑨現場状況の確認のための情報通信機器の配置

 映像・音声の送受信が可能な情報通信機器を設置し、技術者が遠隔から工事現場の状況を確認できることが求められます。またその通信機器が利用可能な通信環境がきちんと確保されていることが求められます。

 遠隔で必要な情報のやりとりが確実にできれば、一般的なスマートフォンやタブレット端末、WEB会議システムでも可能です。但し、山間部等における工事現場において、遠隔からの確実な情報のやりとりができない場合はこの要件を満たすはできません。

従来の兼任制度における注意点

 従来通り、営業所と近接する専任を要しない工事現場においては、営業所技術者が主任技術者等を兼任することが可能です(平成15年4月21日付 国総建第18号)。

 また、営業所から近接していない工事現場であっても、請負金額が4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満)で専任を要しない場合には、主任技術者が「専任特例1号」の兼任要件(請負金額除く)をすべて満たしていれば兼任が認められます。

 但し、あくまで営業所技術者が兼任できる工事現場は”1件”までとされており、今回の営業所技術者等が専任を要する工事現場の主任技術者等を兼任できる制度(建設業法第26条の5)と、上記の他の兼任特例との併用は認められていませんので、ご注意ください。

 昨今の建設業においては令和5年から次々と制度が新設されています。前回の現場の兼任性に続き、今回は営業所技術者の兼任の新制度について紹介しました。

 建設業許可申請に関して、また主任技術者又は監理技術者についてご相談がございましたら、当事務所までお気軽にご連絡・ご依頼ください。