専任現場の兼任に新制度「専任特例1号」
建設業法改正 令和6年12月13日施行
建設業の許可業者は、元請・下請けにかかわらず施工するすべての工事現場には、必ず技術者を配置することが定められています。この技術者のことを「配置技術者」といい、配置技術者には主任技術者と監理技術者の2種類があります。下請契約の請負代金の額の合計が5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上(※金額の改正は令和7年2月1日施行)となる場合には、特定建設業の許可が必要となるとともに、主任技術者に代えて監理技術者を配置しなければなりません。
また、請負金額が一定金額以上の建設工事には、この配置技術者を現場専任で置くこととしています(建設業法第26条第3項)。
国土交通省は、昨今の技術者不足や情報通信機器技術の発展を背景に、この配置技術者の現場専任の要件を合理化し、一定の要件に合致する工事に関しては、兼任を可能とする制度『専任特例1号』を新設しました。
一定の条件とは、以下の①〜⑧のすべての要件を満たした場合に、主任技術者・監理技術者の『現場兼任』が認められます。

『専任特例1号』専任現場の兼任の要件8つ
専任現場の兼任の要件である①〜⑧(全てを満たすこと)を具体的に紹介します。
①建設工事の請負代金が1億円未満(建築一式の場合は2億円未満)
以前は、請負代金が4000万円(建築一式工事は8000万円)以上の工事には現場専任が必要でしたが、この金額要件が、1億円(建築一式工事は2億円)以上まで引き上げられました(法26条第3項第一号イ)。 また、請負金額が4500万円(建築一式工事は9000万円)以上、1億円未満(建築一式の場合は2億円未満)の現場の兼任制度が新設されました。
ただし、工事の途中で請負代金が1億円以上となった場合には、それ以降は専任特例を活用できず、主任技術者または監理技術者は専任で配置しなけれなりません。
②兼任現場数は2工事現場まで
配置技術者が兼任できる工事現場の数は2以下となっています(法26条第4項)。なお、”専任特例1号を活用した工事現場”と、”専任を要しない工事現場(請負代金4500万円未満)”を同一の配置技術者が兼任することは可能ですが、”専任を要しない現場”についても、この専任特例1号の全ての要件を満たすことが条件であり、その兼任現場の数は2を超えてはなりません。
また、同一の配置技術者が、「専任特例1号」を活用した工事現場と「専任特例2号」を活用した工事現場を兼務することはできません。
※「専任特例2号」とは監理技術者が、専任を要する現場に監理技術者補佐をそれぞれ配置し二つの現場を兼務できる従来の特例のこと(法二十六条第三項第二号)。
③工事現場間の距離は2時間
配置技術者が兼任する二つの現場間の距離は、一日で巡回可能でありその移動距離は約2時間以内としています。2時間以内は現場間の片道に要する時間であり、車など通常の交通手段で確実に移動できる手段に限ります。
④下請け次数は3次まで
発注者から直接依頼を受けた元請から仕事を受注する業者を一次請けといい、この一次下請業者からさらに下請に発注された業者を二次請けといいます。
特例1号では、当該建設業者が注文者となった下請契約から数えて、下請次数が3を超えていないことが定められています。
なお、工事途中において、下請次数が3を超えた場合には、それ以降は専任特例を活用できず、配置技術者は専任で配置しなければなりません。
⑤連絡員の配置が必要
各工事には監理技術者等との連絡や、その他必要な措置を講ずるために「連絡員」を置く必要があります。
例えば工程会議や品質検査等が2つの工事現場で同時期に行われる場合に、監理技術者等が遠隔から指示等をして工事現場側にて適切に伝達することや、施工管理の補助を円滑に行うこと、また事故等の対応も想定して、この「連絡員」を配置することとしています。
この連絡員は、一つの現場に複数人配置することや、複数工事の兼務も可能です。
<連絡員の要件> |
・営業所技術者(主任技術者)と同等の実務経験 ・当該建設工事の専任や常駐は求めない ・雇用形態は、直接的・恒常的雇用関係は必要ない(ただし、当該請負会社が配置するものであり、施工管理の最終的な責任は請負会社が負うこと) ・土木一式工事又は建築一式工事である場合は、当該工事に関する実務の経験を一年以上有する者に限る |
⑥施工体制を確認する情報通信技術の措置
工事現場の施工体制を主任技術者又は監理技術者が、情報通信技術を利用する方法により確認するための措置を講じていることが求めれらます。CCUS又はCCUSとAPI連携したシステムなどを利用して、現場作業員の入退場が遠隔から確認できるものの設置が必要です。
⑦人員の配置を示す計画書の作成と保存等
建設工事を請け負った建設業者は、以下の事項を記載した人員の配置を示す計画書を作成し当該工事現場に備え置き、及び帳簿の保存期間と同じ期間営業所で保存していることが定められています。
建設業法施行規則(法26条第3項第1号ロの国土交通省令で定める要件)<第17条の2 第5号> |
イ:当該建設業者の名称及び所在地 ロ:主任技術者又は監理技術者の氏名 ハ:当該主任技術者又は監理技術者の一日あたりの労働時間のうち労働基準法第32条第1項の労働時間を超えるものの見込み及び当該労働時間の実績 二:当該建設工事に係る次の事項 (1)名称及び工事現場の所在地 (2)建設工事の内容 (3)当該建設工事の請負代金の額 (4)第一号の移動時間 (5)一次下請契約、二次下請契約及び三次下請契約のうち実際に締結されたもの (6)第17条の2第3号の者の氏名・所属会社及び当該建設工事に関する実務の経験の内容 (実務の経験の内容については、当該建設工事が土木一式工事又は建築一式工事である場合に記載) (7)第17条の2第4号の措置 (8)第17条の3の情報通信機器 |
⑧現場状況の確認のための情報通信機器の配置
配置技術者が、該当工事現場以外の場所から当該工事現場の状況を確認するために、映像及び音声の送受信が可能な情報通信機器の設置が必要です。また、その機器通信が利用可能な環境が確保されていることとしています。
遠隔で必要な情報のやりとりが確実にできれば、一般的なスマートフォンやタブレット端末、WEB会議システムでも可能です。但し、山間部等における工事現場において、遠隔からの確実な情報のやりとりができない場合はこの要件を満たすはできません。
昨今の建設業においては令和5年から次々と制度が新設されています。今回は現場の兼任性の新制度を紹介しましたが、次回は営業所における専任技術者の現場兼任についてお伝えする予定です。
建設業許可申請に関して、また主任技術者又は監理技術者についてご相談がございましたら、当事務所までお気軽にお問合せください。
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