トラック運送事業者の許可更新制度とは?事業者の準備ポイント

(貨物自動車運送事業法改正 2025年6月4日可決・成立/令和9年4月1日施行予定)

 2025年6月4日、参議院本会議において「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が可決・成立しました。この法改正により、トラック運送事業(一般貨物自動車運送事業)の許可更新制度が導入されることとなりました。施行日は2027年(令和9年)4月1日を予定しています。

 従来は、一度許可を取得すれば無期限で事業を継続できましたが、新制度では5年ごとの更新が必要となります。また、運賃に関しても、従来の「標準的な運賃」制度から「適正原価」制度へと移行し、より実態に即した運賃設定が求められます。さらに、多重下請けの制限無許可事業者への委託禁止など、事業運営における規制が強化されています。以下、改正の内容について、ポイントを4点に絞ってご説明します。最後に新制度導入に向けてトラック運送事業者が今から準備すべきことについてもご紹介します。

トラック運送事業の新制度/4つのポイント

①許可の5年ごとの更新制

 これまで一度取得すれば無期限であった貨物自動車運送事業の許可が、今後は5年ごとに更が必要となります。更新時には、事業者の安全対策や運転手の処遇状況などが審査され、基準を満たさない場合は許可が更新されない可能性があります。

②適正原価の導入

 従来の「標準的な運賃」制度に代わり、人件費や安全対策費を考慮した「適正原価」が国によって告示されます。事業者は、この適正原価を下回らない運賃での取引が求められ、荷主にも適正原価を支払うよう是正指導が行われるようになります。

③委託次数の制限

 多重下請け構造を是正するため、運送の委託は2回までとする努力義務が課されます。これにより、最終的に運送を担う事業者の利益確保と運転手の処遇改善が期待されます。

④無許可事業者への委託禁止

 違法な白トラック等の無許可で貨物自動車運送事業を行う者への運送委託が禁止され、違反した場合は罰金が科されます。また、無許可事業者を利用する荷主に対し、国土交通大臣は是正を要請・勧告することになります。

トラック運送事業者が新制度前に準備すべきこと

 新たに導入される許可更新制度に円滑に対応するためには、事前の準備が非常に重要です。以下のポイントを踏まえて、早めに体制整備を進めておくことが求められます。

毎年の事業実績報告書や事業概況報告書を正確に作成・保管する

 まず、更新申請に必要となる書類や手続きについて正確に把握し、余裕を持って準備を進めることが大切です。特に、事業実績報告書や事業概況報告書といった毎年の提出書類は、正確に作成・保管しておくことで、更新時の対応がスムーズになります。また、運賃については、国が告示する「適正原価」を下回らないよう設定を見直し、荷主との契約内容についても再確認・調整が必要です。不適正な運賃での受注は、許可更新審査の際に不利に働く可能性があります。

運行管理体制や安全対策の強化を図ること

 委託体制については、今後は運送の委託が2回までに制限されるため、現行の委託構造を点検し、必要に応じて再構築することが求められます。特に、下請けが多層化している事業者にとっては、大きな体制変更が必要になる場合もあります。さらに、コンプライアンスの強化も欠かせません。無許可事業者への委託が禁止されることから、取引先の許可状況をしっかり確認し、適正な取引先とだけ契約を結ぶ体制を整備することが重要です。

 加えて、運行管理体制や安全対策の強化にも取り組みましょう。運行管理者や整備管理者の体制整備、ドライバーへの教育・指導、安全投資の計画など、日常的な取り組みが審査の評価対象となります。

財務諸表や社会保険・労働保険の納付状況を適切に管理する

 財務諸表や社会保険・労働保険の納付状況を適切に管理しておくことも、許可更新において重要です。更新時には、事業の健全性や継続性が審査されるため、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を正確に作成・保管しておく必要があります。

 さらに、社会保険や労働保険への適切な加入・納付がなされているかどうかも確認対象となる可能性が高く、未加入や滞納があると、更新審査で不利益となる恐れがあります。とくに運転者の処遇改善が重視される今後の制度では、こうした法令遵守体制の整備は欠かせません。

 日頃から経理や労務に関する書類を正確に管理し、第三者にもわかりやすく提示できるようにしておくことが、円滑な許可更新につながります。

営業所や車庫の使用権限を明確にし、関連書類を整備する

 また忘れてはいけないのが営業所や車庫の使用権限です。登記事項証明書や賃貸借契約書などの関連書類を整えておきましょう。特に、過去に車庫として登録していた土地が、現在はマンションなどが建設されている事例が散見されます。車庫の登録は常に 最新の情報に変更するようにご注意ください。

 新制度の導入により、トラック運送業界は大きな転換期を迎えています。正式な提出書類や手続きの詳細については、国土交通省からの公式発表を待つ必要がありますが、事業者の皆様は、早めの情報収集と対応策の検討を行い、スムーズな移行を目指してください。一般貨物自動車運送事業に関するご相談は、STパートナーズへお気軽にお問合せ、ご依頼ください。