建設業許可と定款の目的記載について

(建設業許可/東京都)

 建設業許可の手続きに際し、定款の目的と申請業種について、東京都建設業課から指摘や、お客様から問い合わせがあったので、その内容をご紹介いたします。

会社の定款とは?

 定款を非常に大まかに定義すると、会社の商号(社名)や所在地のほか、事業目的や組織体制など、会社を運営していくための基本的なルールをまとめたもの(書類)となります。 

建設業許可の申請業種と定款の目的記載の関係について

 建設業許可の申請業種と定款の目的記載の関係について、東京都では以下のような運用としています。

定款の目的欄への記載許可業種 (東京都知事許可の場合)
「建築・土木工事の施工および請負」【全29業種】全て可能土木一式/建築一式/大工/左官/とび・土工・コンクリート/石/屋根/電気/タイル・れんが・ブロック/鋼構造物/鉄筋/しゆんせつ/板金/ガラス/塗装/防水/内装仕上/機械器具/熱絶縁/電気通信造園さく井/建具/水道施設/消防施設清掃施設/解体
「建築工事の施工および請負」一級建築士施工管理技士が技術者になりうる業種
【全17業種】が可能
建築一式/大工/左官/とび・土工・コンクリート/石/屋根/タイル・れんが・ブロック/鋼構造物/鉄筋/板金/ガラス/塗装/防水/内装仕上/熱絶縁/建具/解体
「土木工事の施工および請負」一級土木施工管理技士が技術者になりうる業種
【全9業種】が可能
土木一式/とび・土工・コンクリート/石/鋼構造物/舗装/しゅんせつ/塗装/水道施設/解体

※上記表は東京都の運用です。行政庁により判断基準が異なるため、事前確認することをお勧めします。

 管工事・電気工事等の設備工事については、個別にその業種が読み取れるように定款の目的に記載することが望ましいとされていますが(例:電気設備工事の設計施工など)、「建築・土木の施工(請負)」と記載されている場合に限り、建設業許可の29業種全ての申請を認める運用がなされています。

事例①

 一社目の事例は、更新申請の際に東京都の建設業課より指摘を受けたもので、概要は次の通りです。

 前回(5年前)の建設業許可の更新の際、定款を変更して目的を追加するという「誓約書」が提出されていました。

 今回の更新申請の時点においても目的の変更がなされていないため、目的変更の登記をした後でないと許可が出せません。

 私たちは、今回の更新申請から関与しているため、前回の更新時に誓約書を提出していたという経緯は知らされていませんでした。会社の現担当者さんにも、引継ぎがなされていなかったそうです。

 東京都の建設業許可申請では、申請業種に関して定款の目的から読み取れない場合には、次のいずれかの対応が必要となります。

①株主総会で定款の目的変更の決議を行い、登記完了後に申請する。

②次回の株主総会で定款の目的変更を行う旨「誓約書」を添付して申請する。

 株主数が比較的に多い会社や上場企業など、すぐに定款変更ができない場合の救済措置的な対応です。

 今回のお客様は、上記の「誓約書」を5年前の更新申請の際に提出していたので、本来であれば更新許可後の最初の株主総会で目的変更の決議と登記を行う必要がありました。そして、更新許可後初めての決算変更届を提出する際に、目的変更後の定款も一緒に添付する必要があったのですが5年間も未対応だったため、今般の指摘となったそうです。

 定款を再度確認すると、主な業種であるガラス工事業については記載されていましたが、内装工事業などの他の申請業種に関しては明記されていなかったため、

①定款の目的に「建築・土木・設備工事の施工」を追加する株主総会決議と変更登記

②目的変更後の履歴事項全部証明書+株主議事録(写し)を提出

 といった手続を経ることで、更新申請が無事に受付となりました。

事例②

 二社目は、当社の既存取引先から「消防施設工事の業種追加申請を検討しているのですが、それに伴って定款の目的変更も必要ですか?」と問い合わせをいただいた事例です。

 当該取引先の現行定款には「建築工事の施工および請負」とだけ記載されているため、「消防施設工事業」の許可申請をするためには、定款の目的を変更する必要があります(上記の表を参照)。

 しかし、定款変更のために株主総会は開催するのは極力避けたいようで、何か他に手段があれば教えて欲しいという相談でした。

 そこで、令和5年5月の専任技術者の要件緩和に伴い、施工管理技士の資格者については、指定学科を卒業していなくても一定の実務経験を積めば、専任技術者になることができるように運用が改正されていることに着目しました。

「施工技術検定規則及び建設業法施行規則の一部を改正する省令(令和5年5月12日)」の概略

●1級の第1次検定合格者を大学指定学科卒業者同等とみなす

  資格取得後、3年の実務経験が必要です

●2級の第1次検定合格者を高校指定学科卒業者同等とみなす

  資格取得後、5年の実務経験が必要です

 「消防施設工事」に関しては、該当する施工管理技士、例えば、建築施工管理技士の取得後、所定の実務経験を積むことで専任技術者となることができるようになっています。そのため、定款の目的に「消防施設工事業」の記載がなくても「建築工事の施工および請負」という記載をもって申請業種として認められるのかどうかについて、東京都の建設業課に電話で確認をしてみました。

 その回答は次の通りでした。

「消防施設工事」は、設備工事にあたるため、定款に記載してある「建築工事」に含まれると解釈することは難しい。

一級建築施工管理技士 + 実務経験(3年)が「消防施設工事」の専技として認められるようになったとしても、個別にその内容が読み取れるよう、定款の目的に表記されているのが望ましい。

 上記の内容を相談者に伝え、私たちからは、目的変更する旨の誓約書を提出する方向で申請をしてはどうですか、というアドバイスをさせていただきました。

 社内で検討してもらった結果、株主等のステークホルダーの意向を重視するため、次年度の株主総会で目的変更の了承を得たうえで、業種追加申請をする方向となりました。

 今回は、建設業許可の申請業種と定款の目的記載の関係について、改めて確認することができましたので、事例としてご紹介させていただきました。

 当事務所では、建設業許可に関する様々なご相談もお受けしています。ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問合せください。

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