社内研修「産業廃棄物処理業」
先日、社内実務研修を行いました。普段仕事で実務に直結する知識の習得やブラッシュアップをしたいとの声がスタッフからあがり、その第一回目として、弊社取扱い業務の中でも相談件数の多い「産業廃棄物処理業」をテーマに、その基礎を学びました。代表による講義と、自由に質疑応答や意見の交換ができるスタイルで実施しました。
【研修内容】
今回は、産業廃棄物処理業の基本として、廃棄物処理法(廃掃法)による廃棄物の定義や、分類、種類、欠格事由などの確認を行った後、申請書類作成時の注意点やポイントなどを再確認しました。その概要を産業廃棄物処理業の解説とともに紹介します。
廃棄物とは
まず基本用語ですが、廃棄物の処理上の概念として「物」は「有価物」と「廃棄物」に分けられます。そして「有価物」とは、他人に有償で売却可能なものであるとされています。これに対し、「廃棄物」とは、占有者が自分で利用したり、他人に有償で売却することができないために不要となった固形状または液体状のものと定義されています。
廃棄物は廃棄物処理法(廃掃法)によって、限定列挙されています。
廃棄物とは
「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの」(法第2条第1項)
そして「廃棄物」は、「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に大別されます。
一般廃棄物 | 産業廃棄物以外の廃棄物 |
事業系一般廃棄物 | 事業活動に伴って生じた廃棄物で産業廃棄物以外の廃棄物 |
特別管理一般廃棄物 | 発性、毒性、感染性その他の人の健康上または生活環境に係る被害を生じる恐れのある性状を有する一般廃棄物で政令で定められたもの |
家庭系一般廃棄物 | 一般家庭の日常生活に伴って生じた廃棄物 |
特別管理産業廃棄物 | 発性、毒性、感染性その他の人の健康上または生活環境に係る被害を生じる恐れのある性状を有する産業廃棄物で政令で定められたもの |
(普通)産業廃棄物 | 事業活動に伴って生じた廃棄物で法令で定める20種類の廃棄物のこと |
産業廃棄物___業種限定なし | あらゆる業種から排出される物 |
産業廃棄物___業種限定あり | 建設業や食品製造業等、限定された業種から排出される物 |
私どもにご依頼をいただくお客様は、建設業を営んでいることが多く、「業種限定あり」とされている建設系産業廃棄物の処理に該当します。
廃棄物の処理の流れ
次に、廃棄物が発生してから、処理や処分、再生するまでの流れをお伝えします。
「産業廃棄物処理業」には、「収集運搬」と中間処理・最終処分を含む「処理」に分けられます。
これから産廃業を始めるというお客さまの場合、定款の目的に産業廃棄物を扱う旨の記載が必要となります。下記の図を見てもわかるように、収集運搬をするのか、または、処分業を行うのかによっても、定款の文言は変わりますので注意が必要です。場合によっては定款の変更を求められることもあります。
廃棄物処理の流れとその行為および廃棄物処理法上の用語の概念
廃棄物処理の収集運搬の許可と責任者
産業廃棄物の排出事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければなりません。これは、排出事業者が「自ら処理する場合」と「処理業者に処理を委託する場合」があります。そして、排出事業者から委託を受けて産業廃棄物の収集運搬又は処分を行う場合には、産業廃棄物処理業(収集運搬業、処分業)の許可が必要となります。
産業廃棄物処理業許可で気をつけるポイントはいくつかありますが、代表的なものは次のとおりです。
●収集運搬業許可は、廃棄物を「積む込む場所」と「積卸し場所」の両方の都道県知事の許可が必要となります。 ●取り扱う産業廃棄物の種類ごとに取得する必要があるため、種類を増やしたい場合は、変更許可申請をしなければなりません。 |
産業廃棄物の種類
産業廃棄物の種類は以下に分類されています。
産業廃棄物の種類表 | ||
---|---|---|
①燃え殻 | ②汚泥 | ③廃油 |
④廃酸 | ⑤廃アルカリ | ⑥廃プラスチック類 |
⑦紙くず | ⑧木くず | ⑨繊維くず |
⑩動植物性残渣 | ⑪動物系固形不要物 | ⑫ゴムくず |
⑬金属くず | ⑭ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず | ⑮鉱さい |
⑯がれき類 | ⑰動物のふん尿 | ⑱動物の死体 |
⑲ばいじん | ⑳産業廃棄物を処分するために処理したもの |
産業廃棄物の種類表の詳細は「産業廃棄物収集運搬業許可」のページへ
建設業と産業廃棄物
建設工事に伴い生ずる産業廃棄物を建設系産業廃棄物と言います。代表的なもので、「建設7種」と呼ばれるものは次の通りです。
建設7種とは
前出にある「産業廃棄物の種類表」のうち、種類⑥~⑨、⑬、⑭、⑯が該当します。
⑥廃プラスチック類 ⑦紙くず ⑧木くず ⑨繊維くず ⑬金属くず ⑭ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず ⑯がれき類
建設業の工事現場においては、廃棄物の排出事業者は「元請事業者」と法定されています。発注者や下請事業者ではありません。つまり元請事業者が廃棄物を運搬する場合は、「自己」が排出した廃棄物を運搬することにあたるため、許可は不要です。ただし、自社運搬する場合であっても、車両の表示義務や、書面の常時携帯が義務があり、収集運搬基準の遵守は必要となります。
排出事業者が自己運搬する場合の義務
①運搬車両の両側面に表示義務
・産業廃棄物を収集運搬している旨
・排出事業者名
②書類の携帯義務
・氏名または名称および住所
・運搬する産業廃棄物の種類、数量
・運搬する産業廃棄物を積載した日
・積載した事業者の名称、所在地、連絡先
・運搬先の事業者の名称、所在地、連絡先
また一定の条件のもと、下請事業者を排出事業者となりうることがあります。ただし一回に運べる量も1㎡以下と微量であり、運搬先も極めて限定的となっています。
下請事業者が排出事業者となる条件 ①請負代金の額が500万円以下の工事(維持修繕工事および瑕疵補修工事) ②特別管理産業廃棄物以外の廃棄物 ③一回に運搬する廃棄物が1㎡以下 ④運搬の途中で積替え保管を行わない ⑤運搬先は元請業者が使用権限を有する保管場所または廃棄物処理施設であって、排出場所と同一の都道府県または隣接する都道府県に存ずるもの ⑥事業場の位置、廃棄物の種類および量、運搬先並びに運搬を行う期間等を具体的に記載した別紙を作成のこと ⑦産業廃棄物の運搬を行うことが書面による請負契約で定められていること |
廃棄物処理は、都道府県知事許可が必要となることは前述の通りです。都道府県をまたぐ収集運搬を行うため、複数自治体の許可をお持ちのお客さまも珍しくありませんが、各自治体によって手続きの運用は異なることがあります。産廃収集運搬業の許可申請等でご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。