建設業許可「実務経験証明」の落とし穴|都庁の指摘事例と解決策

(建設業許可/東京都)

 「経験年数は足りているはずなのに、許可が取れない…」 建設業許可の申請で、多くの方がつまずくポイントの一つが「実務経験の証明」です。

 経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者(専技)の要件を実務経験で証明する場合、単に「5年や10年の経験がある」だけでは不十分。「その経験を客観的な資料で証明できるか」が厳しく問われます。

 先日、当事務所でサポートした2社の申請でも、まさにこの「証明」の部分で予期せぬ壁に直面しました。今回は、東京都の審査で実際にあった指摘事例と、それを乗り越えるための注意点を解説します。

事例①|業種追加:「この工事、本当に管工事ですか?」

すでにお持ちの許可に業種を追加する申請での出来事です。

  • 状況:電気工事業の許可を持つA社が、新たに「管工事業」を追加申請。専技の経験年数は10年以上あり、証明資料として工事の請求書と通帳のコピーを提出しました。
  • 都庁からの指摘:「提出された請求書を見ると、工事内容が電気工事に見えます。管工事の経験とは言えないのではないでしょうか?」
  • 原因:請求書の工事名が「〇〇設備工事」といった記載で、それだけでは具体的な施工内容(配管工事なのか、配線工事なのか)が判別しにくい状態でした。

解決策

提出した請求書に見積番号が記載されていたので、該当する工事の具体的な内容が記載された「見積書」を追加で提出。
見積書には、給排水配管の敷設といった管工事の詳細な内容が明記されていたため、無事に管工事の経験として認められました。

最初に提出した請求書
追加で提出した請求書

この事例の教訓: 請求書は証明資料の基本ですが、それだけでは業種を特定できないケースがあります。審査官が疑問に思った際に、工事内容を補強できる契約書や見積書をセットで準備しておくことが、スムーズな審査につながります。

事例②|新規申請:「経験期間が3ヶ月足りません」実務経験を証明できるのは「決算期まで」だった

 こちらは、過去に建設業許可を持っていた会社を吸収合併し、新会社で新たに許可を申請したケースです。

  • 状況:B社の経管予定者は、過去に役員を務めていた合併前の会社(建設業許可あり)での経験を基に、証明書類を準備しました。「合併前の会社は決算が3月決算変更届を7月に提出していたから、7月までは許可が続いていた。だからその期間の経験も認められる」と考え証明書を準備。
  • 都庁からの指摘:「行政庁として事業の実態を確認できるのは、届出が出ている決算期までです。それ以降の期間は経験として認められません。」
  • 原因と結果:認められなかった期間を除くと経験年数が3ヶ月不足することになり、別の期間を証明する資料を追加で準備し、再提出となりました。行政庁が「許可の効力が継続していたこと、およびその期間に建設工事を適切に施工していたこと」を公的な書類で確認する際、最後に適正に提出された決算変更届の対象期間、つまり決算期(3月)をもってその年度の実態把握とみなしているからです

経営経験期間確認

 建設業許可を持たない期間の経験を証明するには、工事の請求書といった裏付け資料が不可欠です。東京都は、原則として「1ヶ月につき1件」の請求書が必要ですが、「経営経験・実務経験期間確認表」を提出した場合は、請求書等の間隔が四半期(3ヵ月)未満であれば、その間の請求書等の写しの提出を省略可能です。

経営経験期間確認表

「実務経験証明」3つの鉄則とチェックリスト

上記の事例から、特に東京都の審査を通過するために押さえるべき鉄則が見えてきます。

「実務経験証明」3つの鉄則

鉄則1:工事内容は「誰が読んでも分かるように」具体的に書く

「設備工事」「改修工事」といった抽象的な記載はNGです。「〇〇ビル 給排水衛生設備配管工事」「△△邸 内装仕上工事」のように、申請したい業種との関連が一目で分かるように記載しましょう。

鉄則2:経験期間に「3ヶ月以上の空白」を作らない

東京都の審査では、証明資料(例:請求書と入金資料)の間に3ヶ月以上の空白期間があると、「その間は事業を営んでいない」と見なされ、経験期間が途切れてしまう可能性があります。

そのため、経験期間全体を通して、資料は途切れることなく連続して揃えておく方が、申請に必要な資料の枚数を少なく抑えることができるため、準備の手間が大幅に軽減されます。

鉄則3:「なぜこの資料で証明できるのか」を説明できるように準備する

「これは本当に建設業の経験か?」「申請業種の工事と言えるか?」といった疑問を先回りして考え、請求書だけでなく、契約書、見積書、注文書、図面などを組み合わせて、誰もが納得できる資料構成を心がけましょう。

チェックリスト

内容チェクリスト
経験年数要件を満たしているか(5年、10年など)
業種の一致工事内容が申請業種と明確に対応しているか
資料の連続性証明資料の間に3ヶ月以上の空白期間はないか
資料の具体性契約書・見積書などで工事内容を具体的に裏付けできるか
会社の状態(過去の会社の場合)許可の有効性や決算変更届がきちんと提出されているか

実務経験の証明は、専門家にお任せください

 実務経験の証明は、単に書類を揃えれば良いという単純な作業ではありません。資料一枚一枚の内容、整合性、会社の届出状況など、さまざまな要素が複雑に絡み合います。

「自分のケースは大丈夫だろうか?」 「証明資料が揃うか不安…」

 もし少しでもご不安があればぜひ当事務所へお任せください。貴社の状況を丁寧にお伺いしサポートいたします。

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