相続による一般貨物自動車運送事業の継続認可申請

 先般、一般貨物自動車(トラック)に関して、相続による継続認可申請という承継手続中でも少し珍しい手続に関与することができましたので、その内容を少しご紹介したいと思います。

 

【1】 相続による継続認可申請の概要

 相続による継続認可申請の手続ができるのは、次のいずれの条件も満たす場合に限られます。

・一般貨物自動車運送事業者が「個人(事業主)」であること

・当該個人が死亡し、その被相続人の経営していた一般貨物事業を相続人が引き続き経営する場合

 従って、法人で一般貨物事業を経営している場合で代表者が死亡した場合は相続による承継の対象外であり、法人の代表者である相続人は、法人として事業を承継することはできないことになります。

【2】 認可申請手続きの流れ

 相続による継続認可申請の基本的な手続と流れは、下記の図の通りです。また、本手続の気をつけたいポイントは以下の2点です。

①被相続人の死亡後60日以内に申請書を提出すること

②法令試験を2回不合格になると承継は一切できないこと

【3】 他の承継手続との相違点

 合併や分割の認可申請とは、事業計画や所要資金の計算(残高証明書の提出)など、基本的な手続は変わりません。大きく異なるのは次の3点です。

①提出期限があること

 上述したように被相続人の死亡から60日以内に提出しなければならず、期限を徒過した際の救済規定はないので注意が必要です。

②法令試験2回不合格後の再申請はないこと

 法令試験を2回続けて不合格になった場合、合併や分割であれば再申請をすることは可能ですが、相続による承継の場合は再申請が認められていません。そのため、相続人が一般貨物事業を経営するためには新規申請する必要があり、許可取得までに無許可となる空白期間が生じてしまうことに注意が必要です。

③相続に関する資料を提出すること

 相続を証明する資料の添付が求められます。

●被相続人と申請者(一般貨物事業を承継する相続人)の続柄を示す戸籍謄本など

●申請者が事業を承継することを同意する他の相続人全員の同意書

 従って、相続人が共同して事業を承継することはできず、相続人のうちの1人のみが承継可能ということになります。

※国土交通省「相続に関する手続情報」より引用 全文はこちら https://www.mlit.go.jp/onestop/007/images/007-022.pdf

【4】手続のご相談は早めに

 今回は、東京23区の某区から一般廃棄物の運搬事業を委託されているので、相続による承継手続で事業を継続していきたいというご相談でした。

 当事務所にご相談いただいた時期が早かったこともあり、戸籍の収集から認可申請までには充分に余裕がありました。当事務所では初めての事案だったこともあり、東京運輸支局に相談をすると、支局でもほとんど例のない申請とのことでした。

 相続による継続認可申請は申請期限が定められていることに加え、法令試験の準備もきちんとしていかないと、区からの委託事業が継続できない等の不都合が生じます。

 一般貨物事業は法人での許可取得が大多数かと思いますが、もし個人での事業承継をお考えの場合、先に法人化して事業承継を行う手段も考えらます。

 当事務所では、一般貨物(トラック)事業の事業承継に関してもご相談に応じています。ぜひお気軽にご連絡をください。