建設業許可の分割認可申請と取下げ+再申請
(建設業/承継認可)
先般、建設業(大臣許可)の分割認可申請を行い、無事に認可となりました。本案件については都合2回、認可申請を行う稀な事例でした。その内容を少しご紹介させていただきます。
【1】 建設業許可の事業承継について
令和2年10月1日から、建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度が新設されています。
改正以前の制度では、建設業者が事業譲渡・合併・分割(以下、「事業承継」)を行う際には、従前の建設業許可を廃業し、新たに建設業許可の新規申請をし直す必要がありました。この場合、廃業日から新たな許可日までの間に、軽微な工事以外の工事を請け負うことができない空白期間が生じてしまう問題がありました。
改正後は、事業承継を行う場合はあらかじめ事前の認可を受けること(相続の場合は死亡後30日以内に相続の認可を受けること)で、空白期間を生じることなく、建設業者としての地位の全部を承継することが定められました。
なお、事業承継(相続)の認可の審査においては、承継者(相続人)が許可要件等を備えていることが必要となっています。
【2】 事業承継手続の流れなどについて
大臣許可、各都道府県知事許可のいずれにおいても、概ね上記の流れとなります。
①事前相談
予約制のため、事業承継の承継予定日(効力発生日)から逆算して余裕を持った時期とする必要があります。
②申請時期
各許可行政庁により異なりますが、今回は当事務所で申請経験のある関東地方整備局(大臣)と東京都、千葉県の内容を示します。
【事業継承の申請受付】
●関東地方整備局(大臣):承継予定日の90日前まで
●東京都:承継予定日の閉庁日を含まない2か月前から25日前まで
●千葉県:承継予定日の60日前まで
※いずれも相続の場合は死亡後30日以内
③認可申請の審査手数料
事業承継の認可申請は、審査手数料が不要です。
④引き続き使用することができる許可番号
【許可番号の引き継ぎ】
●建設業許可業者が無許可業者に承継される場合 → 従前の許可番号が引き継がれます
●複数の建設業許可業者間で承継が行われる場合 → 引き継ぐ許可番号の選択が可能です
⑤承継の対象外とするケース(譲渡・合併・分割の場合)
承継者は、被承継者の建設業の全てを承継する必要があります。
なお、両社が有している建設業許可の種類によっては、承継できない場合があり、承継日より前に一部廃業届の提出が必要な場合もあります。
⑥認可条件資料(後日提出資料)
事業承継(相続)の認可申請時点で、認可予定日で確認することができない要件等は認可条件を付し、認可後に速やかに提出する必要があります。
⑦事前認可申請の取下げ
認可申請書を提出し、受付された後に取下げ事由が発生した場合(事業譲渡や合併・分割計画が破棄された場合等)は、「認可申請の取下げ願」の提出が必要となります。
⑧認可後の許可の有効期間
【許可の有効期限】
●事業承継の場合:承継の日の翌日から5年
●相続の場合:被相続人の死亡の日(相続の日)から5年
承継日当日も許可は有効となるため、認可通知書記載の有効期間は、5年と1日になるところが、通常の新規許可や更新許可と異なります。
例) 承継認可の通知書に記載される許可の有効期間 令和6年11月1日~令和11年11月1日 更新後の許可通知に記載される有効期間 令和11年11月1日~令和16年10月31日 |
【3】 取下げ+再認可申請の概要
今回の案件では、認可通知書が発行された後に、分割の効力発生日が1か月後に変更になっていたことが判明しました。その理由を聞くと、関係取引先や金融機関等のステークフォルダーとの調整が上手くいかず、手続が1か月延びてしまったとのことでした。
関東地方整備局に相談したところ、認可通知書に許可期間が記載されている手前、簡単な補正では対応することはできないとの回答でした。善後策としては一度、認可申請の取下げを行ったうえで、改めて分割認可申請をするように要請されました。関東地方整備局の担当者さんも初めての事例とのことでした。
その後、依頼者と協力して、取下げ+再申請を問題発覚から中2日で対応して、無事に再認可を受けることができました。
【4】 まとめ
一般貨物や一般乗用旅客などの更新がない事業承継手続では、認可が下りないことを理由として承継の効力発生日が後ろ倒しになっても、実質的な問題は別として、認可手続き上は支障がないことと対比すると、建設業の許可は事業承継のスケジュール管理が特に重要だと学んだ事案でした。
当事務所では、建設業許可の事業承継に関しても、迅速かつ柔軟に対応しています。ご依頼の際は、ぜひお気軽にご連絡ください。
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