在留資格「経営・管理」要件が厳格化|資本金3,000万円など変更点5つ

(在留資格「経営・管理」)2025年10月16日施行

 先日、在留資格「経営・管理」に係る「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」及び「出入国管理及び難民認定法施行規則」の一部が改正され、許可基準が大幅に改正されました。

(引用元:出入国在留管理庁 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html)

 近年、形だけの会社設立(ペーパーカンパニー)による在留資格「経営・管理」の不正取得事例が増加しています。こうした状況から、日本の経営・管理は「お金で買えるビザ」と揶揄されることもありました。今回の改正は、こうした不正を防止するための対策と、外国人人材受け入れと共生への総合的な対応の一環としての基準を見直すことを目的としています。

 改正により何が変わったのか、変更となった5項目を新旧比較表とともに解説いたします。

新旧比較表

①資本金要件 ※1資本金または出資の総額が500万円以上資本金または出資の総額が3,000万円以上
②常勤職員の雇用義務化 ※2日本に住居する2名以上の常勤の職員日本に住居する1名以上の常勤の職員
※対象者は日本人、特別永住者および永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
③日本語能力なし申請者または常勤職員のいずれかが相当程度(B2相当以上)の日本語能力を有すること
※日本人・特別永住者以外はさらに条件あり
学歴・経歴要件事業の経営または管理について3年以上の経験(大学院において経営または管理に係る科目を専攻した期間を含む)を有していること3年以上の経営・管理経験(特定活動※3の在留資格での在留期間も含む)、または、経営・管理に関する修士相当以上の学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む)を有している博士
⑤事業計画書の評価義務化「事業計画書」の提出経営に関する専門知識を有するもの(中小企業診断士、公認会計士、税理士)の評価を受けた「事業計画書」の提出が必要

※1※2:改正により※1と※2は両方とも満たすことが必要となりました。
※3
:日本において貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備活動を含む活動を指定されたものに限る

1. 資本金要件の大幅引き上げ

 資本金の額又は出資の総額が500万円以上から、3,000万円以上に変更され、従来の6倍にあたる金額が必要となります。これは、従来の基準より高い水準を求めることで実態のない事業の乱立を防ぐ狙いがあると考えられます。

 なお、事業主体が法人の場合は、株式会社における払込済資本の額(資本金の額)又は合名会社、合資会社若しくは合同会社の出資の総額をさします。個人の場合は、事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など事業を営むために必要なものとして投下されている総額をさします。

  • 【旧】500万円以上
  • 【改正後】3,000万円以上

2. 常勤職員の雇用義務化

 常勤職員の数が「1人以上」に緩和される一方で、資本金の要件と両方を満たす必要があるため、注意が必要です。これは、より実態のある事業経営を求めるという方針の表れと言えるでしょう。また常勤職員とは、日本人特別永住者および法別表第二の在留資格をもって在留する外国人(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)に限ります。法別表第一の在留資格いわゆる就労ビザなどの資格を持って在留する外国人は除きます。

  • 【旧】「資本金500万円以上」または「常勤職員2人以上」
  • 【改正後】「資本金3,000万円以上」かつ「常勤職員1人以上」

3. 求められる日本語能力

申請者または常勤職員のいずれかが相当程度の日本語能力を有することが必要です。ここでいう「常勤職員」には、法別表第一の在留資格保有者(就労ビザ等)も含まれます。

  • B2相当以上の日本語能力
    • B2とは自立した日本語使用者で、専門分野の技術的な議論も含め具体的、抽象的話題でも主要な内容の会話のやりとりが自然にできる程度
  • 日本人または特別永住者以外は、以下のいずれかに該当すること
    • N2以上の認定者(日本国際教育支援協会および国際交流基金が実施する日本語能力試験 JLPT)
    • BJTビジネス日本語能力テスト(日本漢字能力検定協会)において400点以上取得していること
    • 中⾧期在留者として20年以上日本に在留していること
    • 日本の大学等高等教育機関卒業していること
    • 日本の義務教育を修了高等学校を卒業していること

4. 学歴・経歴要件

 旧制度では、経営者に従事する者は、学歴・職歴は必須要件ではなく能力判断材料の一つにすぎませんでしたが、改正案では、申請者自身の能力やより高いレベルの専門性や経験を証明することが新たに求められるようになりました。具体的には、以下のどちらかを満たす必要があります。

  • 学歴要件: 経営や管理に関連する分野の大学(博士、修士、専門職学位など)を卒業していること
    • 外国において授与されたこれに相当する学位も含みます
  • 経験要件: 事業の経営または管理について、3年以上の実務経験があること
    • 在留資格「特別活動」に基づく、貿易その他の事業の経営を開始するために必要な事業所の確保その他の準備行為活動(起業準備活動)期間も上記に含みます

5. 事業計画書の評価義務化

 在留資格決定時において提出する「事業計画書」について、その計画に具体性や合理性が認められ、実現可能かを評価するものとして、経営に関する専門的知識を有する者(中小企業診断士、公認会計士、税理士 ※施行日時点)による評価が義務付けられました。

 

「経営・管理」在留中の新制度取り扱いについて

 既に「経営・管理」の在留資格で日本に滞在している方は3年間の経過措置が取れらます。施行日から3年が経過した令和10年10月16日までの間に、在留期間の更新許可申請を行う場合については、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の許可基準に適合する見込み等を踏まえて許否判断が行われます。

 なお、3年を経過した在留期間更新許可申請の際には、改正後の許可基準に適合する必要があります。ただし適合しない場合であっても、経営状況が良好であり法人税等を適切に納付している場合は次回更新申請時までに許可基準を満たす見込みがある時は、その他の在留状況を総合的に考慮し許否判断を行います。

 また「高度専門職1号ハ」(「経営・管理」活動を前提とするもの)についても、「経営・管理」の許可基準を満たすことが前提となることから、上記と同様に取り扱われます。

 最近は在留資格「経営・管理」に関するお問い合わせが増えてます。経営・管理の取得をご検討の方は、ぜひSTパートナーズへお気軽にご相談・ご依頼ください。