建設業で特定技能外国人を雇用するには?

 近年、建設現場で外国籍の方を見かける機会が増えています。外国籍の方が日本に在留するためには「在留資格」が必要ですが、建設業の現場作業が可能な在留資格には、身分系在留資格(「永住者」「定住者」など)のほか、「技能実習」そして「特定技能」があります。

 本記事では、その中でも特に建設業界で注目されている「特定技能」制度について詳しく解説します。

【特定技能制度とは?】

 「特定技能」とは、国内で人材を確保することが難しい分野「特定産業分野」において、専門的な知識や経験を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。2018年に改正出入国管理法が成立したことで創設され、2019年4月から受け入れが始まりました。

2種類の特定技能

 特定技能には「1号」と「2号」の2種類があります。

  • 特定技能1号:特定産業分野で、相当程度の知識または経験を必要とする業務に従事する資格。在留期間は通算で上限5年です。
  • 特定技能2号:特定産業分野で、熟練した技能を要する業務に従事する資格。要件を満たせば在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も可能です。

対象となる16の特定産業分野

介護農業
ビルクリーニング漁業
工業製品製造業飲食料品
建設外食
造船・舶用工業自動車運送業
自動車整備鉄道
航空林業
宿泊木材産業
2025年9月現在

 上記の表のうち、水色で示した「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野は、特定技能2号の在留資格は設置されておりません。

同じく水色の「介護分野」については、現行の専門的・技術的分野の在留資格「介護」があることから、特定技能2号の対象分野とはしていません。

 

【人手不足が深刻な「建設分野」の特定技能制度】

 16の特定産業分野の中でも、建設業は特に人手不足が深刻な業界です。特定技能制度は、この課題を解決する大きな力となっています。

 制度創設当初、建設分野は作業内容によって業務区分が細かく分かれていましたが、2022年の再編により業務範囲が拡大。現在では、建設業に関わるほぼ全ての作業が以下の3区分に集約され、より柔軟な受け入れが可能になりました。

建設分野で従事できる業務

1. 土木区分

  • (例)コンクリート圧送、とび、建設機械施工、塗装 など

2 . 建築区分

  • (例)建築大工、鉄筋施工、とび、屋根ふき、左官、内装仕上げ、塗装、防水施工 など

3 . ライフライン・設備区分

  • (例)配管、保温保冷、電気通信、電気工事 など

【建設分野の独自のルール「受入計画の認定」】

 建設分野では、技能実習生の失踪や不法就労といった問題が起こった背景から、安価な労働力としてではなく適正な賃金や社会保険、安全衛生が保証された環境で受け入れるため、業界として独自のルールが設けられました。

 特定技能外国人を受け入れる企業には、出入国在留管理庁からの在留資格取得前に、あらかじめ「受入計画」を作成し、国土交通省の認定を受けることが義務付けられています。また、認定後も認定計画の実施状況についても確認を受ける義務があります。

建設分野における特定技能者受け入れの流れ

受け入れる企業の認定基準

企業側も国土交通省へ受入計画の認定を得るためには、下記の条件を満たさなければなりません。

「受入計画」の主な認定条件

  • 建設業法第3条の許可「建設業許可」を受けていること
  • 建設キャリアアップシステム「CCUS」に事業者登録していること
  • 一般社団法人建設技能人材機構「JAC」の会員であること
  • 建設業法に基づく監督処分を受けていないこと
  • ハローワークで求人募集を行っていること
  • 受け入れる特定技能外国人の数が、企業の常勤職員数を超えないこと
  • 特定技能外国人を、日本人と同等以上の給与・待遇で雇用すること
  • 受け入れ後、労働安全衛生法に基づく特別教育などの安全衛生教育を行うこと
  • 5年間の在留を見据えた技能向上計画を作成し、実施に努めること

受け入れ企業に課される「10の義務的支援」

 特定技能1号の外国人に対しては、職業生活や日常生活を安定して送れるよう、受け入れ企業(または登録支援機関)による以下の10項目の支援が義務付けられています。これらの支援内容は「支援計画」にすべて記載しなければなりません。

10の義務的支援

事前ガイダンス:雇用契約や日本での活動内容、入国手続きなどに関する情報提供

出入国の際の送迎:日本の空港への出迎えと、帰国時の空港への見送り

住居確保・生活に必要な契約支援:連帯保証人になる、社宅を提供するなどの支援

生活オリエンテーション:日本のルールやマナー、公共機関の利用方法などの説明

公的手続き等への同行:役所での住民登録や社会保障・税に関する手続きの支援

日本語学習の機会の提供:日本語教室の情報提供や、学習教材の案内

相談・苦情への対応:仕事や生活の悩みについて、母国語で相談できる体制の整備

日本人との交流促進:地域のお祭りなど、日本人と交流する機会の情報提供

転職支援:企業の都合で雇用契約を解除する場合の、転職先の紹介や推薦状の作成

定期的な面談:支援責任者による外国人本人およびその上司との定期的な面談の実施

参考:一般社団法人建設技能人材機構「JAC」のホームページ https://jac-skill.or.jp/system/support.php

【建築分野で特定技能外国人になるには】

 外国人が建築分野の「特定技能」ビザを取得するには、18歳以上で健康状態が良好であることに加え、「技能」「日本語能力」の二つの基準を満たす必要があります。これらの能力を証明するため、原則として以下の試験に合格しなければなりません。

「特定技能1号」の要件

●技能評価試験 以下のどちらかに合格

 ・「技能検定3級」

 ・「建設分野特定技能1号評価試験」

日本語能力 以下のどちらかに合格

 ・国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)

 ・日本語能力試験(JLPT)の N4以上

 

 技能実習の経験者等で、技能実習2号を良好に修了した方は、上記の技能試験と日本語能力試験の両方が免除されます。そのため、試験を受けることなく特定技能ビザへ移行することが可能です。

特定技能外国人になるためのルート

特定技能外国人になるまで

【特定技能は企業の未来を支える制度です】

 特定技能制度を活用することで、外国人に「特定技能1号」として最大5年間、現場で活躍してもらうことができます。

 さらに、一定の実務経験を積み、試験に合格して「特定技能2号」へ移行すれば、在留期間の更新に上限がなくなり、家族(配偶者や子)の帯同も可能になります。これは、外国人材が日本で長期的なキャリアプランやライフプランを設計できることを意味し、「永住」への道も開かれます。

 当事務所では、建設業のお客様から外国人の雇用に関するご相談を多数いただいております。

 建設業許可申請で培った実績を活かし、CCUS登録から国土交通省への受入計画作成・申請代行、そして外国人本人に必要な在留資格(ビザ)申請まで、ワンストップでサポートいたします。

 Zoomやお電話でのご相談も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。