永住許可の要件と入管への申請

(VISA 在留資格)

 先日、外国籍のお客様から、在留資格に関するお電話をいただきました。永住を希望しているが、申請して許可をもらえるのかどうか、という内容のご相談でした。

 永住許可とは、簡単に言うと元の国籍のままで日本に住み続けることができる権利です。法律に反しない限りはどのような職業にも就くことができるため、一般的な就労資格では許可されないような単純労働などの職業にも就くことができます。在留期間の制限もないため、在留資格更新の手続きが不要となります。

 永住許可は、いずれかの在留資格を持って滞在している外国人が、現在の在留資格を変更するかたちで申請します。従いまして初めて日本に来日する場合などは、永住申請はできません。

 最終的な許可・不許可の判断は法務大臣の自由裁量とされており、その明確な基準といえるものは存在しませんが、基本的には、活動内容、在留状況、必要性の有無などを総合的かつ公平に考慮して判断されます。

 

 法務省は、永住許可に関しては、次のようなガイドラインを公表しております。

永住許可に関するガイドライン

永住許可の法律上の要件】

【1】素行が善良であること

 法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること

【2】独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること

 日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること

【3】その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

 ア)原則として引き続き10年以上本邦に在留していること※。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する

 イ)罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること

 ウ)現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること

 エ)公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

※ ただし、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には、(1)及び(2)に適合することを要しない。また、難民の認定を受けている者、補完的保護対象者の認定を受けている者又は第三国定住難民の場合には、(2)に適合することを要しない。

※【原則10年の在留】の規定には特例があります

詳しくは出入国在留管理庁HP「永住許可に関するガイドライン」へ(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html

出入国在留管理庁HPより(令和6年6月10日改訂)

 

 上記のガイドラインを簡単に解説しますと、

 【1】は、日常生活において日本国の法令をきちんと守り、懲役や禁固刑、罰金に処せられたことがない事です。駐車禁止や一時停止違反など軽微な違反でも回数によっては対象になりますので注意が必要です。ただ処罰されたことがある場合でも特定の期間(5年から10年程度)が経過すれば許可の可能性があります。

 【2】の、独立の生計を営むとは、例えば生活保護などを受給していないなどです。将来の安定した生活が見込まれるとは、現在所持している在留資格により基準は異なりますが、年収が300万円以上が一つの目安とされています。転職をしていた場合には収入が安定しているかどうか、扶養家族の人数に応じた年収額があるかなども審査の対象です。

 【3】の日本国内の利益に合するとは、ア〜エまで細かい要件があります。ア〜エまでの要件を一部を説明しますと、(ア)の引き続き10年以上在留しているとは、在留資格が途切れず在留し続けておりそのうち直近5年以上は就労または居住していることです。年間100日以上または1回の出国で3ヶ月以上の出国がある場合は「引き続き」として判断されない可能性があります。(イ)は住民税や国民健康保険、国民年金などの税金を納期限を守ってきちんと支払っているかが審査されます。(ウ)は取得している在留資格の最長の在留期間を持っていることですが、就労ビザや配偶者ビザ、家族滞在ビザの場合「5年」ではなく、当面の間は「3年」をお持ちであれば、「現に有している在留資格について最長の在留期間をもって在留していること」とみなされる運用です。(エ)は麻薬や覚せい剤など慢性中毒でないことや第一種、第二種や指定感染症患者等でないことなどが要件として挙げられています。

永住者の配偶者等の場合の永住申請

 今回のお客さまは、「永住者の配偶者等」でしたので、【1】【2】に適合することは要しません。また【3】の(ア)の「原則10年在留に関するの特例」である在留期間の短縮が適用されます。

この特例には8項目あり、居住条件は以下の(1)が適用されます。

(1)日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること

 お客様の場合は、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、引き続き日本に1年以上在留していました。その他の要件についても確認をして必要書類を揃え、永住許可申請をしました。先日、東京出入国在留管理局に取次申請に行き、無事に受付されました。

 在留資格の諸手続きは、オンライン化が進んでおりますが、永住許可申請は、オンライン申請ができないため、直接、入管に申請に行く必要があります。入管は、混雑していることが多く、申請するだけでも待ち時間が数時間かかることもありますので、事前にインターネットで予約をして日時を指定してから窓口へ行きました。

永住申請の審査に関する注意点

 提出書類で ”原本確認” が必要な書類がある場合は、特に注意が必要です。

 事前に、「永住審査部門(相談窓口)」で原本確認をしなければならず、その受け付けカウンターでの待ち時間が長いのです。場合によっては、別日に原本確認だけのために来庁することもあるそうです。当日、私が並んだ時は、すでに50人待ちで、呼ばれるまでに、2時間以上かかりました。

 さらに、永住許可申請は他の申請より標準処理期間が長くかかります。東京出入国在留管理庁の場合は、今現在、永住審査に、おおよそ1年ぐらいかかるとも言われています。ここで、気を付けなければならないことは、在留期間の更新許可の申請中は、その結果が出るまで期限日の2ヶ月後までに在留できる在留期間の特例期間がありますが、永住許可申請の場合はその特例期間がないということです。つまり、永住許可申請をしていても、審査中に、現在の在留期間の満了日が来ると”不法滞在”になってしまいます。永住許可が下りるまでに、有効な在留資格を維持するために、更新申請などをする必要があるのです。

 お客さまの在留資格の満了日を確認しつつ、無事に許可されることを祈りながら待ちたいと思います。

 

 当事務所では、在留資格に関する諸手続きを取り扱っております。当事務所では、申請取次行政書士が忙しいお客さまに代わって入管に直接行きますので、お客さまが入管で長いお待ち時間をいただく必要もございません。永住許可など在留資格に関しまして、お気軽にお問合せください。